日本編(伊香保温泉)

2005年2月19日(土)・2月20日(日)

8回目の結婚記念日(出発前日まで〜伊香保温泉・初日)


2005年2月22日は、8回目の結婚記念日。伊香保温泉街
毎年結婚記念日には、2人で食事に行ったりする。今年は私が「会席料理がいい。」と言ったら、みのむちくんは「温泉に行こう。」と言う。

会席料理は安いところでも、なんだかんだで1万円ぐらいかかるので、温泉旅館に泊まるのとあまり変わらない。しかも、旅館だと帰らなくていいし、上げ膳据え膳の何にもしなくて、さらに朝食つきだからオトクである。

そんなわけで、今年は温泉旅館に行くことになった。またまたみのむちくんは、「びゅう」などの店頭で、パンプレットをたくさんもらい、インターネットで熱心に調べている。

そして、私にもパンフレットを見せて、「どこがいい?」と尋ねるが、皆似たり寄ったりの会席風料理で、似たような日本家屋。どれも同じにしか見えない。(一部例外あり。)

思わず「どこでもいいよ。」と無責任なことを言い放つ。(まただよ。。苦笑)するとみのむちくんは、「横手館」という旅館に予約を入れた。横手館は群馬県・伊香保温泉にある老舗旅館。昔、某クレジットカードのCMのロケ地に使われたんだとか。

この旅館の大きな特長は、本館が「大正9年に建てられた総桧(ひのき)造りの四階建て」ということ。大変珍しいらしい。なぜなら現在は、建築基準法などの問題もあり、4階建ては鉄筋コンクリートでしか建築できないからだ。おまけに客間も、最近では珍しいニ間続きの和室。

旅行情報サイトには、「大正時代の建物がそのまま残され、風情漂う老舗旅館」と書いてある。そんなわけで、鉄筋コンクリート建ての別館もあったが、「この旅館らしさ」を求めて、本館にした。

しかし!「大正ロマン」と言えば聞こえはいい。だがそのせい横手館で、エアコンが取り付けられず、風呂・トイレ共同。(別館は冷暖房完備で風呂・トイレ付き)まるで、ぼろアパートの物件情報のようである。(笑)しかも、夏涼しく過ごせる構造になっているので、隙間風も入りやすいらしい。

おまけにここまで古い家屋では、座敷わらしが出そうである。座敷わらしとは、古い家に住みつく子供の姿をした妖怪。でも一説には、「子供の姿をした神様」とも言われている。

「座敷わらしがいる間はその家は栄える」とか、「その姿を見たものには、幸運が訪れる」といわれているからだろう。

余談だが、岩手県金田一温泉の「緑風荘」という旅館は、座敷わらしに遭遇できる部屋(槐の間)があり、大人気らしい。

なぜなら、総理大臣とか大手企業の社長が就任前に滞在したこともあり、「女性は玉の輿、男性は大出世できる」という噂がある。そんなわけで「槐の間」は、2008年まで予約でいっぱいらしい。

…というわけで、横手館で座敷わらしに遭遇できるならラッキーだが、古すぎて妖怪とか幽霊とか、なんか色々出てきそうな風情である。

情緒たっぷりの風情ある旅館なのか?…それとも、単なるぼろ屋の凍てつく寒さの中での修行となるか…?それは行ってみないと分からない。(大げさな!笑)

2月19日
昨夜から雪が降り、真冬らしい気候となる。「伊香保温泉は、東京より寒いだろう」と容易に想像できるので、厚着をする。ロングタイプのダウンジャケットなら、例え修行となっても大丈夫である。(笑)

そしてもちろん、海外旅行とは比べ物にならないぐらい、気が抜けている。(というか、どうでもよいと思ってる。苦笑)いつも海外旅行では、パソコン1台分の値段の一眼レフを持参する。

そして、もう1台はどこでも撮れるようにコンパクトサイズのデジカメ。もちろんスーツケースには入れず、機内持ち込みである。(さらにみのむちくんも別途、2台のカメラを持っているという用意周到振りである。)だが今回、私が持って行くカメラは「誰でも簡単に撮れる」やっすいデジカメのみ。ガイドブックもない。

さて、伊香保温泉に行くには高速バスに乗るため、新宿駅へと向かう。バスの出発時刻は午前10時30分。私の出勤時間とあまり変わらない。
温泉街にあった店
その前に、近くのデパートに立ち寄り、天むす弁当と飲み物とかお菓子などを買う。朝ごはんも食べてないし、伊香保温泉の到着は13時30分だからだ。

バスに乗り込むと、やはり行き先が温泉街なせいか?社員旅行と言うより、さらに年代がアップした老人会の慰安旅行みたいなノリである。

しかも、運転手がヘッドマイクで話すあたり、思わず「恐怖の沖縄定期観光バス」を思い出してしまう。(トラウマになってるのか?苦笑)

練馬を通り、群馬県に向かう途中のドライブインで、20分間の休憩となる。みのむちくんも「20分もあるなんて、沖縄の観光バスより余裕がある。」と言ったあたりトラウマなのか?(苦笑)

ここで昼食を買う人も多いが、私は何も用事がない。だが、なんとなく手持ち無沙汰なので、降りてみることにする。みのむちくんが出張から帰る度に、「時間もないのに、よくお土産なんか買えるなぁ。」と思っていたが、こういうところで買っているのかと、一人で納得した。

さらに伊香保に向けて、バスは走り続ける。どんどん景色が変わっていく頃、私はうつらうつらとうたた寝をし、気がつけば終点の「伊香保温泉まちの駅」近くとなっていた。そして予定通り、13時30分にバスは到着する。

ホームページによると、横手館はこの「まちの駅」から、下車徒歩3分らしい。ただしチェックインは15時。まだ時間もあるし、1泊なのでさして荷物も多くない。時間までそのへんを歩いてみることにする。

初めて来た伊香保の温泉街は…まるで「演歌の花道」の世界だった。(笑)
昨今の温泉不況で寂れている上に、雨なんか降ってるものだから、まさにそのままの雰囲気。ちなみに「演歌の花道」とは、テレビ東京で1978年10月1日から22年間放送された名物番組(演歌系歌謡番組)で、独特のナレーションが有名である。
日本三大石段のひとつ…らしい
さらに雨のせいか?、開いてる店も少なく、手持ち無沙汰。ちなみにこの石段は、日本三大石段らしいが、有名観光地出身(奈良)の私には、「だからなんなんだ?」としか思えない。

さらに、日本三大石段と言えば、伊香保の他には、山形県山寺と香川県金比羅山のことだとか。

だが金比羅山は「今の仕事以上にハードなスケジュールのクセに、朝6時に起こされて登らされたすっごく憂鬱だった社員旅行で行った場所」という禍の地。伊香保の石段のせいで、10年以上昔のすごくイヤなことを思い出してしまった!(苦笑)

そんなわけで、チェックインの時間まで、喫茶店で時間を潰す。お茶受けにサービスでチョコレートをくれたが、「観光地値段」なのでやや高め。しかも、喫茶店だけではやっていけないのか?店内は土産物屋を兼ねていた。






大正ロマンか?やっぱり修行か?(伊香保温泉・初日)

横手館の廊下
やっとチェックインの時間になったので、横手館に行く。フロントマンならず、はっぴを着た人が待機しているあたりが、とても旅館らしい。

館内に入ると、一気に大正時代にタイムスリップした雰囲気。「フロント」という名称にもとても違和感があり、「勘定場」とか「御帳場」の方がしっくりきそうだ。

部屋が準備される間、待合室に通される。まるで、修学旅行を思い出すような和・洋室チャンポンな部屋。

しばらくして、部屋に案内してもらう途中で、エレベーターに乗る。建物は大正時代なのに、エレベータがついているとはちょっと意外。

そして、客室の入り口には「○○様(私とみのむちくんの名字)」と和紙に書かれたものが貼ってある。そのへんも、とても旅館らしい。「コレを勝手に他の部屋と差し替えたら、さぞかし困るだろうなぁ。」と不埒なことを考えてしまった。(笑)

その蹴破られそうなドアと、それに続く3畳ぐらいの小部屋。そして、ふすまを隔てて10畳の和室。昔の作りらしく、たたみの大きさは現代間より大きめで、やたら窓がでかい。そして、ベランダ(?)は、くつろげるようにイスとテーブルが置かれている。思わず物珍しげに部屋中を、まじまじと見てしまった。(笑)

ただ、手入れはかなり行き届いてるので、「ぼろっ!」という感じではない。ちなみに鏡台や座椅子、ゴミ箱などは、部屋の雰囲気に合わせているが、さすがに大正時代のものではない。昭和ぐらいか?

客間・入り口付近 客間

もし大正時代のものが置かれていたらビックリだ。古いものもそこまで来ると、ガラクタやごみではなく、歴史的価値のある骨董品になってしまうし。

ところで、旅館はチェックインして、部屋に案内してもらって、簡単な説明がすめば終わり…ではない。「お風呂は〜」「お食事は何時に?」「お布団は何時に敷きましょうか?」と、よく言えば「まるで我が家に帰ってきたようなアットホームさ」(←ちなみに私は、こんな甲斐甲斐しい妻ではない。笑)、悪く言えば「お節介なサービス」がある。

この旅館の場合、「我が家のような」と言うより、「まかない付き下宿」のおかみさんと話しているようである。(笑)ここには「家族風呂」(貸切に出来る温泉)があるので、17時から予約し、その後19時より食事を頼んだ。
ベランダ?
やっと静かになったところで、お風呂に行くまでの間、うたた寝をすることにした。昨日は飲み会で遅かったし、そうでなくても今週は、残業や飲み会で帰りが遅い日が多かった。でも大体私は、土日はいつも昼まで寝てるのだ。

17時頃になり、むっくりと起き上がり、1階にある家族風呂に行く。温泉としては、5人ぐらいが入れる程度の小さなもの。だが貸切なので、そんなもんだろう。

ちなみに、ここの温泉は硫酸塩泉。正確にはカルシウム・ナトリウム・硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物の混合泉らしい。「黄金の湯」と書いてあるが、実際は金属っぽいにおいのする「茶色の湯」である。

「コレならお湯が汚れていても、全く分からないだろう。」とまたまた不埒なことを考える。(笑)余談だが、温泉の成分や効能などが、旅館の案内に書いているあたりが、温泉宿らしい。

しばらく浸かった後、また部屋に帰って、食事が来るまでゴロゴロする。体が温まると余計に眠気を誘うし、外は雪に変わったので、観光する雰囲気ではない。

夕食の時間になり、刺身、煮物、茶碗蒸し等、次から次へと色んなものが運ばれてくる。部屋だしは「宿泊客3名まで」というのが判る気がした。

さすがに群馬県は海なし県。海の幸は、小さな船盛の刺身ぐらいで、ほとんどが「山の幸」である。天ぷらもかぼちゃやマイタケなど、野菜のみで作られている。(おかげで、一時的にお通じがよくなった。笑)だが、私が食べられないものは、ほとんどない。この時初めて、私がダメなのが、海の幸に集中してることに気付く。

白いのは刺身こんにゃく 焼き物(これも魚)
茶碗蒸しとつきだし きのこご飯とお吸い物

1人用の鍋がつくところなど、典型的旅館の会席である。ホテル情報サイトでは「食べきれないほどの量」とあったが、そうでもないと思う。料理の味はまずますである。

里芋の煮物 豚肉のすき焼き
前菜?みたいなもの 野菜の天ぷら

またまたお腹がいっぱいになったので、ぼ〜っとテレビを見る。みのむちくんは大浴場に出かけたが、私は部屋でゴロゴロした。なんだかダラダラしてばかり。(笑)ちょっとだけそのへんをふらふらして、豪華そうな特別室を外から見たりした。

みのむちくんが戻ってきて、「何か飲みたい」と言うので、自動販売機を探してみることにする。1階に行くと、フロント付近にいたおじさんに「何か?」と聞かれる。

だが、「特に用ではない。」と言うと「ああ、探検ですか。」と言われる。大正時代の建物なんて滅多にないので、物珍しさにフラフラ歩いてる宿泊客は多いのだろう。トイレ付近

結局自動販売機は1箇所しかなく、みのむちくんはコーヒー牛乳、私はハーゲンダッツのアイスクリームを買う。みのむちくんは、入浴後はコーヒー牛乳でないとダメらしい。(笑)

だが旅館など、久しく行ってないので、「館内の自動販売機は割高」という法則をすっかり忘れていた。

雪が降ってなければ、コンビニにでも行くところだが、あとはさらに割高な部屋の冷蔵庫の飲み物で我慢することにする。(この付近にコンビニがあるのか?それすら怪しい。)

その後、また深夜放送をぼーっと見て、寝ることにする。さすがにふとんはぼろ…いや、大正時代の骨董品ではない。(笑)立派すぎて、暑いっちゅーの!室内は暖房もよく効いてるし。

ホラー映画の主人公ではないが、やはり夜中に目が覚めて、トイレに行きたくなる。

座敷わらしどころか、妖怪が大集合しそうなこの旅館。(笑)特に真夜中、誰も歩いていない大正ロマンの世界では、ホントになんか出そうである。

ちょっと躊躇したが、生理現象を我慢するのも体に悪い。意を決して部屋を出る。だが、そう思うのは私だけではないらしく、トイレだけは現代風にキレイに改装されていた。

トイレだけは現代風 階段

しかし、ずっとトイレにいると、なんか来そうである。思わず、以前フジテレビで放映された「夜中に医療器具を入れたワゴンを押して歩く看護婦の幽霊」の話を思い出す。その話で怖いのは、「看護婦の幽霊に追い掛けられ、トイレに隠れたら、上から覗かれた。」というくだりである。

やはり霊感のないのはよいことだ。当然何か出るわけではなく、部屋に戻って寝なおす。