怪しげなバスで世界一危険なビーチへ(5日目・クルーズ4日目 寄港地・セントマーチン)
クルーズ4日目の今日は、初めての寄港地・セントマーチン(Saint Martin)に入港する。 朝7時頃に目が覚め、ベランダに出ると、今まで何もなかった海上に徐々に鳥が増え、島が見えてくる。
午前9時前、船はゆっくりとフィリップスバーグ(Phillipsburg)の港に到着する。 下船するために、シーパスカードとパスポートを持って、デッキ1に向かう。船の出口は自動改札のようになっており、ここで乗客の下船をチェックしているようだ。それにしても、下船して間近で見ると、やはりリバティ・オブ・ザ・シーズはとても大きな船である。 セントマーチンの総面積は約88ku。さして大きくない島だが、南北でフランス領とオランダ領に分かれているという珍しい場所である。北部はサン・マルタンと言い、フレンチ・サイド (French Side)。南部はシント・マールテン (Sint Maarten)と呼び、ダッチ・サイド (Dutch Side) と表して呼ばれているようだ。
私とみのむちくんが到着したのはダッチ・サイドの首都フィリップスバーグ。まず港から水上タクシーに乗り、フィリップスバーグのダウンタウンに向かう。それにしても…、もう結構船から離れているのに、未だ船内アナウンスが届くとはびっくりである。(「もうすぐ出航するから、早く戻れ〜!」とか言いそうだ。) 水上タクシーの料金(1人・往復で6ドル)を払うと、取れないように手首に紙製のリングをつけられる。そして、乗客でほぼ満杯になったところで船は出発する。10〜15分ぐらいで、ダウンダウンに到着するが、徒歩なら30分ぐらいかかるようだ。
フィリップスバーグのダウンタウンは、まるで映画のセットのような街。今日もいい天気で結構なことだが、日差しはとても強く、すぐに汗が滴り落ちる。船にタオルを置いてきたのを後悔した。 さてここから、マホビーチ(Maho Beach)、フレンチサイドの首都マリゴ(Marigot)に向かうつもりである。 ![]() マホビーチにはとある理由でとても有名な空港があり、マリゴのフランス料理は、アメリカ本土のグルメたちがわざわざ食べに来るぐらいおいしいらしい。そして最後に、フィリップスバーグのダウンタウンで買い物をするつもりである。 マホビーチ〜マリゴ〜フィリップスバーグ間の移動は、順調にいって、それぞれ3,40分ぐらい。しかし、出航の30分前である17時30分には船に戻らないといけない。(ロイヤルカリビアンの規定によると、定刻までに乗客が戻らなくても出航し、自力で次の寄港地に行くしかない。) 時間的なことを考えると、やはりタクシー移動が無難だろうか? ミキ・ツーリストの人からもらった資料を見ると、マリゴ行きのバスがあるようだが、マホビーチ行きのバスは見あたらない。…というか、地図にあるはずのタクシー乗り場もバス停も見当たらない。 さて、どうするか…? と思案していると、道端に座っている人たちが「どこに行くのか?」と聞いてくる。「マホビーチに行きたいのだ。」と答えると、「これが(マホビーチ行きの)バスだ。」と、タイミングよく通りがかった車を皆で指差す。 ………はあ?? 彼らが指差したのは、どう見てもぼろいワゴン車。どこにも「BUS」と書いておらず、せいぜい「乗り合いの白タク」にしか見えない。「本当にバスか??」と、きつねにつままれたような顔をしていると、「これがバスだ。」と皆一斉に言う。 ![]() よく見ると、フロントガラスのところに行き先を書いた紙が置かれている。しかし、よくよく注意して見ないと分からない上に、マルタのぼろいバスよりもっとボロだ。…新手の白タクか?!これが夜なら、怪しすぎて絶対乗らないだろう。 私とみのむちくんが不審そうな顔をしてるのがわかったのか、作業服を来た乗客の1人が「私はマホビーチのソネスタホテル(Sonesta Maho Beach Resort & Casino)で働いているから(大丈夫だ)。」と言う。車内を見ると、地元の普通の人たちばかり。「多分大丈夫だろう。」と、とりあえず乗車することにする。 しかしこの自称バスは、乗車も適当ながら、降りるところも超適当なようだ。「バスって言ったけど、やっぱり乗り合いタクシーではないか?」と思い始める。 そんなことを考えてると、ソネスタホテルで働いていると言った男性は「私はここで降りるけど、このまま乗っていけば大丈夫だから。」と言って降りていった。 30分ぐらい乗っただろうか…?プリンセスジュリアナ空港(Princess Juliana International Airport)が見えてきた。これが問題の空港で、島唯一の国際空港らしいが、こんな小さな島に国際空港があること自体ビックリである。しかも、マルタのルカ空港より大きそうだ。それからまたしばらく走ったところで「ここがマホビーチだ。」と運転手に言われる。「How much?」と訊ねたら一人2ドル。おお!本当にバス料金だ!
ビーチに向かって歩いていくと、エメラルドグリーンのものすごくきれいな海岸に到着する。こんなに透明度の高い海は、なかなかないだろう。「水着でも持ってくればよかった。」と思ったが、近くの看板に「DANGER」の文字。 実はここは、世界一危険なビーチなのだ。(笑)なぜなら隣接するプリンセスジュリアナ空港は、滑走路が2400mと短いため、頭上すれすれを航空機が通過していく。高層ビル街のど真ん中を離着陸する香港の啓徳空港(カイタック)がなくなった今、「航空マニアの聖地」とも言われているらしい。
そんなわけで、ビーチ近くにあるカフェというか、海の家のようなところで、航空機がやって来るのを待つ。時刻は今、午前10時過ぎ。ただしこれは船内の時間で、ローカルタイムではない。(クルーズのスケジュールは、すべて船内時間で行われるため。)「空港の離発着の時間を調べてくればよかった。」と思いつつ、1時間ぐらい待っただろうか…。 あと15分ぐらい待って、何も来なかったら、もうマリゴに行こう。
そう思いかけたところで、空の彼方から飛行機が…! その後、何機も立て続けに航空機が離着陸を繰り返す。空港の営業時間になったのだろうか?しかし、どれも小型のジェット機ばかりでつまらない。だがもう時間もないし、とりあえず見られたし、次の目的地マリゴに向かうため、もと来た道を歩き始める。 すると…、また旅客機が…!しかもでかい! 慌てて写真を撮ろうとし、向かってくる航空機に真正面からカメラを向けた。(こういう時は、最高速AFは大変便利だ。)しかし…ぶ、ぶつかりそうで怖い!!寸前で思わず避けてしまった。撮れたのはなんとイスラエルエアーの便。カリブ海の小さな島という超マイナーな場所に、これまたえらくマイナーな航空会社。夕方あたりには、エールフランスのA340も到着するようだが、この時間でこの大きさの航空機が着陸したことは、奇跡的のようである。おかげで、とりあえず目的を果たすことはできた。
ちなみに曜日によってはジャンボも離発着するらしいが、かなりやばい風力らしい。特に離陸時、ジャンボが離陸するためには、一旦滑走路の端まで来て停止し、エンジンを全開にしないといけないらしい。その威力はすさまじく、ビーチにいる人たちは、みな紙切れのように吹き飛ばされ、海へと転げ落ちていくらしい。よくそれで「立ち入り禁止」にしないのか?とても不思議だ。 しかも「DANGER」の看板を、誰も気に留めることはなく、離着陸の度に同じ光景が繰り返されるらしい。航空マニアは吹き飛ばされて喜んでいるのかもしれないが、私は航空マニアではない。(2009年1月某民放番組で、このビーチが登場したのには驚いた。それにしても、こんな不便な場所に、我ながらよく行ったと思う。)
さて、次の目的地は、フレンチ・サイドの首都マリゴ。「マリゴに行くのはどうしたらいいか?」と、マホビーチ近くのホテルの警備員に聞くと、「タクシーが必要ですか?」と聞かれる。「バスでもいいです。」と言うと、また通りがかりのバスを止めてくれる。そして運転手に「この人達はマリゴに行きたいらしい。」と伝えてくれた。 マリゴには、ここから直通のバスはなく、途中下車して、フィリップスバーグから来るマリゴ行きに乗り換えないといけないようだ。乗り換えポイントまで来ると、「ここでマリゴ行きを待て。」と言われる。ほどなくマリゴ行きのバスが来た。
マホビーチからマリゴまで、直線距離にするとそんなに遠くないが、大きな湖があるため迂回しないといけない。さらに一旦乗り換えてるので、ちょっと遠回りになる。しかしバスは、いつも10分と待つこともなくやってくる。思ったよりもかなりスムーズに移動できてるので、タクシーを使うまでもないだろう。 「なかなか来ない・スピードを出さない。(車体がぼろすぎて出せない。)」マルタバスに比べたら、ずいぶん効率的である。それにしても、また窓はあけっぱなし。この島のバスに、冷房という観念はないのだろうか?しばらく乗っていると、乗車する客が「ボンジュール」と挨拶してくる。どうやらフレンチ・サイドに入ったようだ。 |
カンガルーを食らう(5日目・クルーズ4日目 寄港地・セントマーチン)
マリゴは、30分もあれば見て廻れる位のこぢんまりした街。今はちょうど昼食時間か…?ほとんど店は開いておらず、なんかつまらない。写真に撮ると、おしゃれな街並みに見えるが、レストランの数も少なそうだし、みのむちくんは熱射病で倒れそうだという。
雨が降らないのはいいが、なんせ暑すぎる。日やけ止めは塗ったものの、ヒリヒリしてきたところを見ると、私も少々日焼けしているようだ。とりあえずミネラルウォーターを買い、最初に見つけたフランス料理店らしい店まで戻る。他によさげなところもなし、フレンチサイドまで来てハンバーガーはないだろう。 店内はいかにもリゾート地のレストラン。メニューを見たら「kangaroo」とあり、何か?と思ったら本当にカンガルーの肉!そこで、カンガルーの肉とカルパッチョ(ホワイトツナ)、テリーヌのようなものを注文する。すごくおいしいと言うほどではないが、まずまずおいしい。(アメリカ人の味覚では、とてもおいしく感じるかも。)カンガルーの肉は、多分言われなければ牛肉か何かだと思うだろう。
ただし、「物価は日本並み」とあった通り、チップ込みで92ドル(約10,262円)支払うことになる。「あれ…?“生ものを食べてはいけない”って、書いてなかったっけ?」と思ったが、今頃気にしてももう遅い。(幸いにもそれはセントマーチンではなく、明日の寄港地「プエルトリコ」のことであった。) ![]() 店を出ると、時刻は昼の1時30分頃だが、未だ店はほとんど開いてない。体力的なこともあるので、早めに切り上げて、フィリップスバーグに戻ることにする。 バス停を探していたら、また「どこに行きたいのか?」と聞かれる。「フィリップスバーグ」と答えると、今いる場所から乗車できるらしい。(降りた場所とはちょっと違うが、バスがぐるっと廻ってくるらしい。) お互いあまり英語が得意ではなく、たどたどしい英語で何度も「ここで待っていたら大丈夫だから。」と、くどいぐらいに説明される。しかも、運転手にも「この人たちは、フィリップスバーグに行きたいらしい。」と伝えてくれる。 ちょっとおせっかいだが、この島の人たちはとても親切だ。まるでロイヤルカリビアンから「このID(シーパスカード)をつけているのは、うちの乗客なので、迷っていたら保護してください。」とでも言われているのか?(笑) おかげでタクシー代だと1万円ぐらいかかりそうなところを、1人10ドルぐらいで済んだ。しかし、乗客が乗っているのにガソリンスタンドに入るバス。はじめて見た。面白すぎる。 ![]() セントマーチンを旅した人の日記によると、「バスに乗るには、かなり旅慣れてないと難しい。」とあった。確かに、バスはバスに見えないし、タクシーも似たような車で乗り合いのようなので、ほとんど区別がつかない。 だが、地元の誰かが教えてくれるので、結構大丈夫である。のんびりして治安もよさそうなので、暑すぎることを除けば、老後をすごすにはぴったりな場所かもしれない。 だが、ちょっとクールな話をすると… ロイヤルカリビアンとカーニバルクルーズは、この島の埠頭を作る際に融資して、港を使用する優先権が与えられたらしい。 さらに、それぞれの船会社は、年間77万人近い乗客を、セント・マーチンに連れてくることを約束している。 2006年にフィリップスバーグの港を訪れたクルーズ客は合計約140万人。乗客がこの島で消費した金額は、約2億2400万ドルにもなると言う。つまりクルーズ客は、この島にとっても大事なお客さんであり、治安が悪化すれば、たちまち自分たちの生活に響くのである。 最後に戻ってきたフィリップスバーグはショッピングのための街。免税店や宝石屋、お土産物屋などのショップがたくさん建ち並ぶ。ブランドや宝石は、これと言って買いたいものもないが、セントマーチンに来た記念に、1つ5ドルのペアのマグカップを買い、みのむちくんは灰皿を買う。(1つ約5ドル)
特にやることもなくなったので、ダウンタウンから水上タクシーに乗り船に戻る。結局、最終乗船の1時間前、4時30分過ぎに戻ってきた。そして、あまりにも暑すぎるので、デッキ11のプールサイドで無料で提供されているソフトクリームを食べ、シャワーを浴びた。
さて今日のドレスコードはスマートカジュアル。「スマートカジュアルって何だ??」と悩むところだが、「きれい目の(ちょっとおしゃれな)カジュアル」と判断し、浴衣を持ってきた。ただし、着替えに時間がかかるので、早めに戻ってきて正解である。 しかし船内には、本当に日本人は私とみのむちくんしかいないようで、日本の民族衣装を着ているのは2人だけ。洋服なら、「単なる東洋人の1人」だが、浴衣を着ていると「私は日本人です。」といって歩くようなもの。いきなり注目のマトになる。(笑)
エレベータで他の乗客と乗り合わせた日には、必ず話しかけられる。「Very nice!」とか「Very cute!」と言われるが、一体私を何歳だと思ってるのだろう?しかもこの船では、誰も着物と浴衣の区別はつかないだろう。 ![]() 今日の夕食は、メインダイニングへと向かう。初日の相席になったカップルはおらず、2人だけの席である。スマートカジュアルの日の料理もちょっとだけ特別なのだろうか?私が選ぼうと思っていた「ほうれんそうとトマトとフォカッチャのサラダ」は、すでにテーブルにセッティングされている。 アメリカ独特のマヨネーズ・ケチャップの味でないのでおいしい。そのあと、みのむちくんは鮭、私は本日の魚を頼んだが、ご飯がついてくるあたり、「日本人だから。」と気をつかったのだろうか?まるで機内食のような取り合わせである。 そしてデザートは、生クリームとさいの目に刻んだ果物が入ったパイ。みのむちくんはアイスクリームを頼んだのに、ウエイターが間違えて、みのむちくんにも同じ物を持ってきた。「注文と違う」と言うと、さらにアイスクリームが追加される。「ふたつとも食べろ。」ということらしい。 さらに今夜は、ガラビュッフェ(Culinary Art Sensation Surf Buffet Picture Taking Solarium)が開催される。(これまた日本語版のコンパスには載ってないので、やはり毎日配布されるものをチェックするべきである。)シェフたちが技巧を凝らし、美しく飾りつけた料理を見せるのだ。 開催までまだ時間があるので、一旦キャビンに戻り、しばらく休憩することにする。帯を締めたままなので、そんなに休憩にはならないが。だがみのむちくんは、浴衣姿のまま、ふご〜と寝ているので、まるで温泉宿に来たみたいである。(笑) 夜11時15分ちょうどのスタートで、それまで入り口近くの外で待つ。しばらくして入場可能となり、まず鑑賞・撮影の時間。クルーズ2日目に実演を見た野菜の彫刻の横に、きれいに盛り付けられたオードブルやデザートがある。しかし、豚の丸焼きはちょっとグロテスク。
そして残念なことに、夕食でおなかがいっぱいになり、未だほとんど食べられない。(見た目は涼しそうに見えるが)浴衣は暑いし、全くお腹は空いてないので、キャビンに戻ろうとすると、2組ぐらいの外国人(どっちかと言うと、我々の方が外国人か?笑)から、「一緒に写真を撮ってくれ。」と言われる。
そんなわけで、今夜はずいぶん遅くまで起きている。ビュッフェに参加したせいもあるが、旅行記の文章は、今日中に書かないと忘れてしまうからだ。明日は、さらに早く起きなければいけないと言うのに。そして隣のキャビンのおっさんは、今日もベランダで大音量のいびきで寝ている。今日のタオルアートはコウモリ。しかもみのむちくんがセントマーチンで買ったサングラスが使われていた。(笑) |