帰国の日(8日目・キト)

今日はいよいよ帰国の日。
6日間の滞在なんて、本当にあっという間で、妹は「もうちょっといられたらよかったのに。」と言う。私も、エクアドルでの仕事始めを待って、妹の職場の人達にも会いたかったし、日本にはない果物をしこたま食べたかった。(笑)だけど仕事の都合があるから、何度考えてもこれ以上帰国を延ばせられない。

そんなわけで、今朝起きたのは夜中の3時30分。高地にも慣れてきたが、やはり朝は体内の水分が抜けているせいか、なんだか息苦しい。しかもいつもは、ヘタしたらこれから寝たりする時間である。

だが昨夜、準備はほとんど終わらせてあったし、今日着る服も用意していたので、そんなに時間もかからない。昨日の果物の残りを食べ、パンを1つだけ食べて、ジュースを飲む。コンチネンタル航空でも機内食が出るのだけど、きっとまずいだろう。(笑)そして今日の服装は、ヒューストンにあわせて真冬のスタイル。でもオタバロで買ったネックレスをしていくことにする。

4時20分ごろ、妹がホテルにやってきた。このホテルは物音が響くので、ノックされる前にわかった。驚いたことに、夜中の2時まで飲んでいて、そのまま寝ずにここまで来たらしい。(こんな時間に女性一人は危ないから…と、同じくエクアドル隊員のKさんも一緒に来てくれた。)空港ロビー

ヒューストン行きは7時30分なので、4時30分にはホテルを出たほうがそうだ。チェックアウトの手続きをすると、3泊で127ドル44セント(約12300円)と言われる。1泊30ドルで90ドルと思っていたのだが、どうも税金が加算されるようだ。そういう意味ではチップ不要だったか?と思うが、まあいいだろう。

それにホテルの人が送ってくれるのかと思っていたら、タクシーを呼ばれた。(「送ってくれる。」と言ってたのだが。)深夜料金なので5ドルと高めな上に、空港に入るために先に払ってくれと言う。空港に行くタクシーにはありがちだが、エクアドルでそんなことを言われたのは初めてだそうだ。

今日のキトは晴天。この調子だと問題なく出発できそうだ。ただし、山の天気は変わりやすく、この15分後にどしゃぶりになっても不思議ではないらしい。しかし私も、到着の時ほどシビアには考えておらず、「飛べなかったらその時のこと」と思っている。

空港に到着すると、妹が「ここから先は、パスポートと航空券を持った人しか入れない。」と言う。ここで妹と一緒に来てくれたKさんとはお別れである。「5時には入った方がいいよ。」という妹の言葉と、チェックインしないといけないのと、妹の任期もあと半年のせいか、握手して意外にあっさり別れた。

チェックインカウンターで待つ そしてチェックインカウンターに並ぶと、麻薬犬(ゴールデンレッドリバー)がやってくる。もちろん調べられて困るものはないが、犬が苦手なので、あまり近づかないでほしい。

しかも、私のスーツケースはやはり容量オーバーで、7ポンドほど移動させないといけない。(アバウトそうなエクアドルでも、コンチネンタル航空は重量に厳しいようだ。)おまけに、機内に持ち込める荷物は2つだと思っていたら、1つだけだと言う。行きはそんなことなかったのに?!…といっても、規則は規則なので、もう1つ預けないといけない。

持込するつもりだった黒いバッグから、慌ててパソコンを取り出した。薄っぺらい布製のバッグでTSAロックもなく、どんな扱いをされるか分からないのに、精密機械は入れられない。

他に貴重品はなかったか?割れ物がなかったか?思い出そうとするが、とりあえず思い当たるものはない。目覚ましも取り出そうかと思ったが、まあこれは最悪壊れても良い。お土産のアルパカのショールの中に包んで、できるだけ壊れないようにした。

次に「アメリカ入国に際しては、滞在する住所を知らせる義務があります。」と言われて、慌ててホテルのバウチャーを探す。(そんなことは、記憶の彼方に飛んでいた。)もしかして、今のバッグの中か?いや、それは控えのはず…と、パスポートをいれたポーチの中を散々探しまくる。…というわけで、やっとチェックインを済ませたときには5時30分を過ぎていた。やれやれである。

しかし、機内で食べようとわざわざ小分けにしたキャンディとチョコレートも出すのを忘れたし、1泊分の着替えも預かりとなってしまった。保険に入ってるのでどうにかなるものの、ロストバゲージだけは勘弁してほしい。

さらに窓口で、空港使用税40.8ドル(約3900円)を支払う。予定より50ドルほど多く出費しているが、私の残金はあと110ドルほど。これから向かうアメリカはカード社会なので、何かほしいものがあればカードで買えばいいし、タクシー代とチップには十分な額だろう。

空港の土産物屋 空港の土産物屋(よく見ると値段が高い)

エスカレーターで2階に上がると、まだ時刻は6時だというのに店が開いている。ちょこっと覗くと、それぞれはこじんまりとしているものの、小さな空港のわりには充実している方だろうか?だが、お土産はすべて買ってしまっているし、特に見るもののないので、出国の手続きに並ぶ。だが、早朝だというのにえらく混みようだ。5時にチェックインして正解である。

しかしやはり空気が薄いせいか、重い荷物を持って歩くと息切れがして疲れる。そこで、高山病対策のために、やたら水を多く飲み、すぐトイレに行きたくなる。この後にセキュリティチェックがあるので、並んでる途中にほとんど飲み干し、残りはごみ箱に捨てた。そして、アメリカも厳しいが、エクアドルのセキュリティチェックもまた厳しい。時計とベルトと靴は、最初から「外してください。」と言われる。

空港のショップ 免税エリアへ

免税エリアに行くと、ものの15分ぐらいで見て回れそうなぐらいこじんまりとしている。
しかし値段はキーホルダーが6倍なだけでなく、先日私がスーパーで買った18ドルの酒は、空港では大中小の大きさ3個セットになっているものの45ドル。(しかもこれでも免税だ。)発展途上国の空港のショップは、街中と落差が激しいとはわかっていたもののびっくりである。昨日までに買い終えて正解であった。しかし店員はみな暇そうで、相手してくれるが、買う気はほとんどないので「後で来る。」と言葉を濁した。

免税エリア(大して店はない) 搭乗ゲート

ところでマリスカル・スクレ空港には国際線の搭乗ゲートは4つしかない。私が見つけられないだけかもしれないが、マルタ国際空港レベルで小さい。そして、ヒューストン行きの搭乗ゲートはA4で、一番奥にある。しかし、A3とA4だけはまたセキュリティチェックがあり、ここではバッグの中身までチェックするようだ。搭乗券の半券を受け取っているところを見ると、コンチネンタル航空のスタッフだろうか?

ここを通過すると、搭乗を待つための座席しかない。もしトイレに行きたければ、もう一度チェックを受けないといけないだろう。面倒なことである。時刻は6時を過ぎ、旅行記の続きでも作ろうかと思ったが、コンセントがつかえない状態なのでやめた。ここで、初めて日本から持ってきた単行本を読んで待つ。

搭乗ゲート 搭乗ゲートより
搭乗ゲート ヒューストン行きのコンチネンタル航空

機内の様子ふとアメリカの入国で、入国カードのサンプルが見れないことを思い出し、一瞬ヒヤッとした。なぜなら、南米のガイドブックはスーツケースの中だし、まさか日本便のように日本語版はくれないだろう。

だが電子辞書や、ESTA登録をプリントアウトしたものがあるから、何とかなるだろうと気を取り直した。しかし、ヒューストンの資料も預けたバッグの中なので、「ヒューストン滞在をどう過ごすか?」を機内で考えることはできなくなった。忌々しい…。

午前7時前、搭乗が始まる。また3列・3列の通路側で、今回も真ん中の座席の乗客はいないようだ。もうあたりはすっかり夜が明け、少々雨が降っているものの、予定通り出発できそうである。

弾丸なヒューストンでの1日(8日目・キト〜ヒューストン)

定刻になる頃、私を乗せた機体は、離陸に向けて、ゆっくりと移動していく。まもなくテイクオフだが、このゆるやかな揺れがやたら眠りを誘う。ほどなくして離陸し、1時間も経たないうちに朝食が配られる。

だが……ホットサンドにサルサソースはもういらない〜〜!!このにおいが食欲を減退する。今はご飯と味噌汁が食べたい。他地域ではそんなこと全く思わないのだが、アメリカ系の食事には飽きてしまうようだ。

テイクオフ中 機内食

おまけによく揺れる。だがどんなに揺れようが、客室乗務員はサービスを続けるし、私はシートベルトサインが出てるのか?出てないのかわからないタイミングでトイレに行った。そして、機内食を食べると、なんだかちょっと気持ち悪い。ジョージブッシュ空港この大揺れのせいだろうか?

しばらく本を読んだ後、また旅行記の続きを書くことにする。それにしてもよく揺れるが、そんなに大気が不安定なのだろうか?

ヒューストンに到着する2時間ほど前、税関申告書が配られる。だが「US?(アメリカのこと)」と聞かれ、渡されたのはそれだけ。ちょっと待て!私はアメリカ国籍ではないから、入国カードも必要なのでは?

そこで、もう一度客室乗務員を呼び止めて、「エントリーカードを下さい。」と言う。そしたら、「トランジットはマイアミ?ヒューストン?今日はアメリカに滞在するのですか?」等と色々聞いてくれる。入国カードに種類があるからだろう。

アメリカには何度か出入国しているから、ヴィザ免除国である日本国籍の私が書くのは緑のカードと分かっている。だが、知らないと、受け答えがちょっとめんどくさい。

最悪はアメリカのイミグレーションで書けばいいが、おそらく日本語版はないだろう。(アメリカの入国審査では、並んでいる間にキチンと記入されているかどうか?係員がチェックするのだ。)内容は大体理解していても、電子辞書でチェックしながら記入したいので、今のうちに書いておきたい。

到着ロビーへ 到着ロビーへ

ヒューストンには定刻通り到着。イミグレーションは当然、アメリカ国民用ゲートの方が早く進んでいく。そこで全てのゲートが、外国人に開放された。入国審査官に、「あなたは、どこから来たのですか?」と言われて、「エクアドルです。」と答えたが、エクアドル国籍(あるいは在住)と間違えられそうなので「エクアドルから来て、日本に帰ります。(アメリカ入国は)トランジットのためです。」と付け加えた。到着ロビー(やっぱりクリスマスの飾りつけ)

そしたら「What time is leave〜」と聞かれたので、帰国便の時間を聞いてるのだと思い、「Ten-thirty.AM」と答えたら「???」という顔をされた。「もしかしてエクアドルを発った時間を聞いているのか?」と思い、Eチケットを見せたら、今度は納得したらしい。

後から考えると、私が「トランジット」と言ったから、乗り継ぎ便の時間を気にしてくれたのだろう。私は明日だと分かってるけど、審査官は知らない。現在時刻は12時近いのに、「10時30分?!間に合わないじゃないか!」と思ったに違いない。

その後言われた言葉(単語)が全く理解できなかったが、「Thank you for your comeback here.」と言って渡されたのは、「ESTA」の説明書。きっと正式名称の「電子渡航認証システムを知ってますか?」と言ったのだろうけど、難しくてきっと日本語でも言われても、すぐ分からなかっただろう。(笑)「ESTAと言ってくれれば、もう登録しましたと答えたのに。」と思った。

しかし、ふと……私は「イミグレーションのトラウマ」を克服していることに気が付いた。
20年ほど前、初の海外旅行。イギリスで運悪く意地の悪い入国審査官に当たってしまった。色々質問されても、ろくに答えられず「あなた何年英語を勉強してきたのか?」とイヤミを言われ、非常イヤな汗を掻いた記憶がある。それが長い間トラウマとなり、私にとって入国審査は緊張の場所だった。到着ロビー

だが今、色々質問されても、何ら臆することはなかった。しかも自分1人しかいないのに。「分からなければ聞き返せばよい。やましいことは何一つ無いのだから、堂々としていればよい。」と思うようになったようである。(しかしそのせいか?逆に最近、よく質問される。苦笑)

さて、ここからは本当に一人旅。しかも「滞在時間は23時間。この時間は絶対厳守です。」の弾丸トラベラーのようである。
まずホテルまでどうやっていくか…?確かアップルワールドのHPには、「空港から電話すると迎えに来てくれる。」と書いてあった。空港内に各ホテルに直結しているテレフォンセンターを見つけたので、電話してみる。出たのはやたら早口で、(おそらく)スペイン語訛りの女性。

おそらく「ピックアップが必要ですか?人数は?荷物の数は?」と聞かれたのだろう。「はい。お願いします。1人で荷物はバッグが2つとスーツケースが1つです。」と答える。

そして、「今、どこにいますか?」と聞かれて、しばらく悩んでしまった。この空港にはA〜Eまでのターミナルがあるということを知らなかったからである。きょろきょろ見回すと、電話があるところに「ターミナルE」と書いてあったので、「ターミナルEです。」と答える。

テレフォンセンター だがしかし…私の特長も何も分からないのに、本当にピックアップできるのか?私はドライバーの名前どころか、男性が来るのか?女性が来るのかすら知らない。

…というか、ターミナルEとは言ったものの、細かな場所まで指定はない。ここで待ってていいのだろうか?ちょっと見て回ると「passenger pickup(パッセンジャーピックアップ)」と書いてある場所があったので、そこで待つことにする。

しかし……迎えは本当に来るのか…?

というか、根本的な問題で、私の適当な英語でちゃんと通じてるのだろうか?ターミナル名を聞いてるぐらいだから、大丈夫だと思うが、誰も来なかったらタクシーで行けばよい。すると約10分後、太目のおっさんがライトバンでやってきた。多分、この人だろうと思ったらやはりそうで、意外とわかるものである。少々視界の悪い中で話しているような会話だが、ちゃんと通じていたようだ。

それにしても、ヒューストン空港は意外に広く、車で5分ぐらい行ってもまだ空港の敷地内。「空港に近いホテル」ということで選んでも意外に遠いのである。そして、到着したのは国道沿いのホテル。バウチャーを渡して、チェックインの手続きをする。クレジットカードのデポジットが必要か?と思ったら、不要だった。もうすでに料金を支払っているからだろうか?

ホテル近くの景色 スリープ イン ブッシュ インターコンチネンタル エアポート
ホテルのフロント 近くには一応レストランが…

しかし私がチェックインの手続きをしている間、先ほどのおっさんが何度も私の前を通り過ぎる。3ドルのチップを渡したら、去っていった。チップがほしかったのだろうと言うことはわかるが、あんたがタイミングを逸したのではないか?

部屋は210号室。1人で使用するにはやや広めの部屋で、ドライヤーもタオルもコーヒーセットも、日本のビジネスホテルにあるものは、何でも揃っている。そして何より、やけくそのようにお湯を出しても、温度が変わらないのが嬉しい。(笑)「高山では暖めすぎてはいけない。」というけれど、体が冷えるシャワーは本当にストレスなのだ。

さらにパソコンは、有線LANが使えたので驚いた。日本国内ではありがちだが、私は海外では初めてで、自宅でインターネットをしているぐらい快適である。(無料で使えるパソコンルームもある。)アメリカは決して好きな国ではないが(のわりにはよく渡航する。笑)、システムがしっかりしていることは事実で、今はこの「キッチリさ」にホッとしている自分がいる。

ホテルの部屋 客室のベッド
洗面所 トイレ

現在は午後1時30分を過ぎたところ。ホテルは安い割に快適だが、ヒューストンは完全なる車社会。しかもメトロや電車がほとんどなく、主なスポットも各地に点在しており、NASAの隣にあるスペースセンター以外にはさして見所もない。もっと言うと、私が到着した時間も中途半端。

ここから一番近いショッピングモールに行くのがいいかもしれないが、そんなに買いたいものもない。ちょっと覗いてみようかな?と思っていたテキサス州最大のショッピングセンター「ギャレリア(Galleria)」は、車で50分ぐらいかかる上に、このホテルからはタクシーでしか行けないらしい。50分と言うことは、物価は日本とほとんど変わらないから6000円ぐらいか?特別買いたいものもないのに、往復1万円以上かけて行くだけの価値があるのか?と思うと、アホらしくて行けない。

う〜ん。。。困った。。
事前から分かっていたが、適度な距離に見所もなく、ちょっと途方にくれる。しかも、なんだか風邪っぽいし、疲れたのでちょっとだけベットで横になる。