6.心は揺れて。。。 T大病院に行った4日後、私は近所の整形外科を受診した。4月から1ヶ月以上治らない腰痛のためで、M先生にも相談したが、「(全く関係ないとは言わないが)筋腫が原因になっている可能性は低い。」と言われたからである。ただし、駅前の整形外科は以前、「5時間待ち」と言う恐ろしい思いをしたので(T大病院より混んでるやん。汗)、同じ区にある別の小規模総合病院である。 初めて行く病院で、30代ぐらいの若い医師だったが、「Yと申します。よろしくお願いします。」ときちんと挨拶し、患者の話をよく聞く丁寧な診察で好印象だった。(おまけに4人ぐらいしか待たなかったし。笑) レントゲンを6方向から撮って、軽い検査(膝を軽くたたいたり、背中を曲げたり・そらしたりして痛みがあるか?とか)をして、結果は、特に異常所見なし。(自分で見てもきれいな背骨!) 「念のためにMRI検査やってみますか?」と言われたが、医師が「必要がない。」と思っている検査に高いお金を払うのももったいないと思い、「悪化した時にやる。」ということにした。 それで「12月に手術を予定している子宮筋腫があります。(でも、それが原因である可能性は低いと言われた。)」と言うと、「関連性を実証しにくいので、婦人科の先生も断言できないと思います。」と言われた。 ただT大病院で撮ったMRI写真を見せると、「結構大きいですね。う〜〜ん。。。似てるなぁ。。」と。因果関係は証明できないが、私のように腰痛を訴え、同じように大きな筋腫を持った患者さんが婦人科の手術をしたら腰痛が治ったらしい。 …というわけで、根本的な解決にはならず、対処療法的な処方(湿布と痛みどめ)をしてもらっただけだが、可能性(整形外科的疾患)を一つ潰せたのがよかった。(私的にはやっぱり筋腫が原因だと思う。) しかしながら…「手術」が確定した日(5月7日)から、下痢が止まらず、その前日からずっと寝不足なのに、何だか寝付けず、料理も作る気にもならず。。。 (思えば、GWに入る前の5月2日、昼過ぎから強い腰痛が起こりだし、さらに夕方にはひどい頭痛と吐き気まで加わって、トイレに行くと顔色はひどく悪く、手は氷のように冷たくなっていた。本当は参加しなくてはいけない宴会をドタキャンし、「タクシーで帰ればよかった!」と思うほどひどい体調だった。思えば、、「きっと外来に行けば、手術のことを言われるに違いない。」と、精神的にいっぱいいっぱいだったのだろう。) 「身体の負担が少ない手術ができるうちにやるべきだ。」と強く主張する医師と、「特に気になる症状がなければ様子見でいいですよ。」と言いつつも、ある日突然「子宮全摘・開腹手術」を言い渡す医師とどちらが親切だと思うか…? M先生は間違ったことはひとつも言ってないし、「腹腔鏡手術ができる今のうちに手術すべきだ」と言うのも、しごくごもっともな意見。 それに(あくまで私の価値観だけど)この先、妊娠・出産の可能性がほとんどなくても、例え再発して再手術することになったとしても、絶対に子宮は取りたくない。 ほとんど自覚症状がなく、そもそも生理にも特別苦労してない私が、なぜそこまでやらなくてはいけないのか?…と思っている私と、 「子宮温存」が当たり前で、当然のように「核出術」と決めているM先生の考えは、何も話さずとも一致している。 (この辺は長い付き合いならではか?) 先生が強く背中を押してくれたことを、近い将来感謝する日が来るのかもしれない…と思いつつ、今はまだそんな気持ちにはなれない。 11年間、「いつかこんな日が来るんじゃないか?」と何となく心の隅にあり、去年、同僚の卵巣がんの話を聞いたときも、10%ぐらい「自分の手術の可能性」を考えていた。(まさかそれが今年だとは思わなかったけど。。汗)さらに今年の2月、子宮筋腫が急成長していることを指摘された時から、「手術と言われるだろうな。」と8割方予測していたけども……。 「手術を受けなくてはいけないらしい」と言う状態と、100%確定との差は大きい。(自分の弱さ加減は分かっていたが)思った以上に動揺している自分がいた……。(駅のホームを歩いていたら、無意識に線路の方に歩いてしまい、本当にヒヤッとした。こんなところから落ちたら、婦人科の手術どころではない。) しかし、まさか自分の背中を押すのがM先生とは思わなかった。。。(そういう意味では先生は私の性格をよくわかっておられる!汗) 「このクソ医者!!」と思えればいいが、あいにくM先生はクソ医者ではない。(M先生が「クソ医者」なら、世の中のほとんどの医師が「クソ医者」である。)M先生は「11年自分が診て来た責任」を果たそうとしているのだと思った。 手術決定から3週間ぐらい過ぎて、やっと気持ちが落ち着いてきたが、それでも「あ〜あ〜いやだいやだ。」と思っていることに変わりはない。 例えるならば、全く泳げなくて水が怖いのに、(先生に)水深3メートルのところに「飛び込んで泳げ。万全のサポートをするから大丈夫!溺れないから。」と言われてるようなもの。「大丈夫」と言うのは頭では分かっているが、実際に水に浸かって平気なのを確認しない限り、「怖い。」という本能は拭い去れない。 さらに腹腔鏡手術が何たるか、よくわかっていない第3者の「(私の受ける手術は)麻酔医はいるの?」と言う言葉に、「当たり前だろが〜〜〜!!(全身麻酔なのに、麻酔医がいない手術など受けたくない。)」と動揺し、「今の医学は進歩しているから大丈夫ですよ。」とか「身内が同じ手術を受けましたが全然元気ですよ。」とか言われても、「病人感覚ゼロ」の私にとって、そんなの当たり前で、元気でいてもらわないと困る。 術前より調子が悪くなるようでは、手術なんかやりたくない。(この辺の感覚は本当に良性疾患ならではだと思う。) 手術を決意するのにこんなにエネルギーが必要だとは知らなかった。。きっとこれは当事者にならないとわからないだろう。(今までもないけども)これからも手術を悩んでいる人に安易に勧めるのはやめようと思った。 そして私は当分、みのむちくんに話さないことに決めた。 みのむちくんは私とは対照的に、「水深10メートルのところで遠泳もOK」と言う感覚。 (例え水深10メートルのところを泳いだことがなくても)「何が怖いの?たいしたことないじゃん。」と思っている。 しかし私は、先生の「大丈夫」は納得できても、みのむちくんが言うことは「無責任な第3者の意見」にしか聞こえない。 大体、「昔の手術は術後、お腹に火箸を突っ込まれるぐらい激痛だった。(今の手術はそれよりずっと楽だと言いたいらしい。)」なんて言われて、手術する気になると本気で思ってるのだろうか…? 歯科の治療で冷や汗をかいたり、具合が悪くなってしまう私に、みのむちくんは「や〜恥ずかし。」とか言って冷やかすが、そんなことを言われると「あ〜〜やめたやめた。」と一気にモチベーションなくすのが私である。 全く異なる考えを持つ人に、自分の気持ちを理解してもらうのは、非常にエネルギーがいる。(ましてや、みのむちくんは「そんなんおかしい。へんだよ。」とか「考えられない。」とか言って、異なる考え方を受け入れにく性格。)そして、今の私は落ち着いてきたものの、時々「心のスポット」にはまってしまい、そんなことに費やすエネルギーはなくなってしまう。 しかも、本人は全く自覚も悪気もないと思うが、みのむちくんの言葉は時としてものすごく人を追いつめる。「まさかこの期に及んで、手術を避けられると思ってないだろうね?」なんて言われて、「手術なんてしない。」という言葉がノド元まで出かかった。まだ家の中で言ってる分にはいいが、勢い余って、病院側にまで言い出しかねない。 だが、M先生のこの間の感じからすると、「わかりました。キャンセルですね。」と簡単に了承するとは思えず、超迷惑をかけてしまうに違いない。(「そんなことでキャンセルするなんて絶対ダメだよ。」とか言って、むしろ強く説得されそう。) 私がこんなことを考えてるとはみのむちくんはつゆしらず。。(このHP見たら自然と分かるんだけど。) あまりに何も言わない私に「どうなってるのか、みのこの担当の先生に聞いてくる!」と言ったが、女性ですら敷居の高い産婦人科にみのむちくんがひとりで行くとは到底思えず無視した。 もしも手術の日まで、どうしても言う気持ちになれなかったら、自分ひとりでいいやと思った。(幸いなことにT大病院は家族の立会いが必須ではないらしい。) そして、子宮筋腫の中でも外側にできるしょう膜下筋腫は、本当に自覚症状が少ない。自覚症状と治療レベルのアンバランスさに(そして命に関わらないということで)、「本当に手術が必要なのか?」と悩む人は多く、私もその考えが時々しゃぼんのように浮かんでは消える。 もちろん先生に言わせたら、「必要だと思うから言ってるんだよ。」って感じだろう。 (多分)膀胱の上にでかい筋腫が乗っているせいで、気がつくとどんなに長くても5時間以上眠れない。俗にいう「夜間頻尿」で、常に寝不足状態となり、小地味に私のQOLを下げている。きっと他にも悪影響を及ぼしているのだろう…と思うがいまいちピンとこない。 そして、人の体験記を読んでいると、恐ろしく心が揺れる(不安になる)時がある。 本来、子宮筋腫は病気のレベルとしては大したことない。だが、色んな人たちの体験記を読んで、この病気が女性を不幸にするのではなく、心無い医師が女性を不幸にするのだと思った。(もちろんM先生のことではない。) いつもいつも、何をしていても常に手術のことが頭につきまとう……。 2月からずっとこのことを考えない日はなく、この状態は、手術の日まで続くのだろう。 きっと、この精神的「安定」と「不安定」を繰り返し、「手術すべきだと言う理性」と「やりたくないという本能」が心の中で闘いながら手術の日を迎えるのだろう。 そうだ!入院当日はパスポートを持っていこう。 どうしても…どうしても手術が怖くなったら、T大病院ではなく、空港行きのバスに乗ればいい。。どこでもいいから2時間後あたりに出発する航空券をクレジットカードで買って、そのまま飛行機に乗ってしまえばいい…。化粧品も下着も持ってるだろうから、服とガイドブックを買えばOKだ。 そう…行き先は国内ではなく、できるだけ遠い場所がいい。。。。 もしアジア行きしかなければ、香港かシンガポールまで行って、そこからトランジットすればいいのだ。パソコンも持参するつもりだから、搭乗する前にネットにつないで、ホテルを予約すれば問題ない。(一応それなりに旅慣れてるつもりなので、この辺の段取りは全然OK。苦笑) 一人で見知らぬ国に行くのは全然平気だ。。 とにかく、病院側が「おかしい。」と思って、連絡してくるまでに出発しなくてはいけない。そんな空想していると、ちょっと気持ちが軽くなってきた。(この辺が海外旅行好きの私らしい。) ただし本気でやれば、大騒ぎの大問題で、何も告げずに日本国内からいなくなるのだから、ヘタしたら警察沙汰である。(汗) |