9.リュープリン1回目(2013年8月20日)

残念ながら…生理が来てしまい、キャンセルすることなく迎えた8月20日。
T大病院の産婦人科外来に行くと、意外に人は少なく。。「これはあんまり待たないかな?」と思ったら、私が呼ばれたのは予約時間を1時間半ほど過ぎたころ。。。

診察室に入ると「生理来た?」と言われたので、「はい。この間の日曜日に。」と答えた。

「(8月)18日…ということでいいのかな?」

「はい。」

「予定通り来たのね。今日、1回目の投与をするわけですが…」と、M先生は電子カルテのディスプレイの横にある卓上カレンダーを手に取り、12月までめくって「ゴール(手術予定日の12月9日)はここだから。。」としばらく無言になった。

「ん〜〜〜。。ちょっと待ってね。。^^;」と、卓上カレンダーを見ながら、何やら考えておられる様子。

聞きたいことはたくさんあったが、とりあえず待つことにした。リュープリンは、一定の期間(約1カ月)ごとに投与しなければいけないから、今、全日程を決めてしまった方がやりやすいのだろう。2回目、3回目の投与日の外来予約を全て登録された。

M先生「これで5週間に一度投与して…注射なんだけど、最後の投薬がこの日(10月29日)で、手術の日(12月9日)まで効いている…という算段です。」

手術までの期間を考えると「3回か4回のどちらかだな。」と思っていたが、3回になったところを見ると、「どういう日程でいけば、少ない回数で行けるか?」を一生懸命考えておられたのだろう。

しかしこれは、薬の効果から考えるとギリギリの日程。「もし間際まで手術日が決まらない病院なら、もう1回と言われるんだろうな。」と思うと、手術日程が早々と決まっていることのありがたみを感じた。(当然のことながら、1回でも少ない方が患者にとってはよいことだらけ。)

「これで3回の日程が決まったわけですが…その他に術前検査を受けてもらうのね。健康診断みたいなので肺活量とか心電図とか…。」と言うことで、11月中旬ぐらいにも来院しないといけないらしい。('A`)だが「この日は僕、いないんだよね。」と選択肢は11月19日しかなく、「それは結構時間を見ておいた方がいいですか?」と聞くと、「午前中で終わって帰ってもらえるよ。」と言われたので、まあいいやと思った。

「この時に、僕と一緒にやる先生を紹介したいから…」と同日に別の医師(K先生)の外来予約を入れ始めたので、思わず私はM先生に言った。

「執刀は先生が?M先生が…?」(してくださるのですか?と言いたい。)

「あー、そうそう。」

予約の手続きの最中だったせいか?まるで「先生は今日、朝ごはんを食べましたか?」の返事のように上の空で答えられた。(実のところ…面と向かって聞いて、万が一「それは○○先生が…」なんて言われた日には、露骨にテンション下がりそうなので、どさくさまぎれに聞けてよかった。)

後からそのK先生を調べると、内視鏡が専門のM先生とは対照的に、婦人科も産科もオールマイティに何でもこなす医師のよう。「M先生の助手って感じなんだろうな。」と勝手に推測した。しかし、それ以上のことは全くわからず、同僚に「K先生ってどんな先生だろう?」と言うと、「M先生の助手だから、(どうでも)いいんじゃない?」と言われ、「そうか。」と納得してしまった。(いいのか?それで。笑)

さらに「術前検査のすぐ後に、麻酔科も受診してもらわないといけないんだけど、この日とこの日どっちがいい?」と言われ、3ヶ月も先の予定が分かるはずもなく、「どっちでも。。」と言いつつ、早い方を選んだ。(「この日も9時なんだけど。」と、いつも私の予約時間が遅めなことを分かっておられるよう。苦笑)

「そんなわけで、手術までにあと4回来院してもらうことになります。」(ある意味、早々に全日程を決めてくれるのは親切だけど、「え〜〜、あと4回も行かんとイカンのか〜〜〜。」と言うのを見透かされているよう。汗。)

事務的なことは終わったようなので、私がもっとも聞きたかったこと「生理を止めるメリットは何ですか?」と尋ねた。

M先生「生理を止める目的は2つあります。第1に子宮は非常に血流が活発な臓器で、生理があるのとないのとでは全然違うのね。」

私「そんなに違うんですか?」

M先生「うん。全然違うよ。生理がある人の子宮は“ぶよぶよ”で…

私「え?ぶよぶよですか…(^^;)」(思わず私は、水を90%ぐらい入れたビーチボールを想像した。)

M先生「そうそう。ちょっと例えは悪いけどね。^^;それで、筋腫を取ろうとしたら、どうしても子宮にメス入れないといけないじゃない?メス入れて、びゃっと血が出たら怖いじゃない。(ここでまた、ビーチボールをメスで切るシーンを想像した。)

あなたも怖いと思うだろうけど、血流盛んな子宮は我々も怖いのよ。輸血しなきゃいけなくなるかもしれないし。まあそういうことは滅多にないんだけどね。」

「非常にM先生らしい(患者を気遣かった)物言いだ。」と思った。

普通の医師なら、「子宮は非常に血流盛んな臓器で、手術中に大量出血したら、輸血や子宮全摘、最悪は命に係わる危険性があります。」と淡々と言うところだろう。それに本来は笑うところではないのに、「ぶよぶよ」とか「びやっと血が出る」とか言われて、思わず笑ってしまった。

M先生「2番目はちょっとでも筋腫を小さくしたいのね。腹腔鏡手術は、お腹に空間を作って行うのだけど、10センチと9センチや8センチでは、手術の楽さがぜんっぜん違うのよ。2センチと3センチではあんまり変らないけどね。多分(リュープリンを投与することで)8センチぐらいになるんじゃないかな?(私の筋腫は現在10センチ程度)」

と言われて、「確かに、そのぐらいの大きさになると、1センチ違っただけで体積が全然違うもんな〜。」とか、(どこで見たかは忘れたが)T大病院が「できるだけ全身麻酔の負担をかけないようにするため、手術は2時間で終わらせるようにしている。」と書いてあったのを思い出した。

M先生「まとめると、第1の目的は“生理をとめること”、第2の目的は“小さくすること”。でも、生理を止めることが1番の目的なので、容量の少ないほうで行きます。」

私「副作用は結構でるものなんですか?」

M先生「副作用は多くの人が出ます。(私の心の声「ああ、やっぱり!!」)ほどんどがカーッとなってほてったり、のぼせたりするような更年期障害みたいな感じです。
でも更年期障害も“全然わからない”と言う人と“すごくしんどい”という人がいるように、強く出ないことを祈るしかないんだけど…。副作用が強く出ても、弱く出ても、薬の効果に変りはないから。」(私の心の声「だったら、出ない方が絶対いいじゃん。」)

私「もし副作用が出たら、何か対処できたりするのですか?それともやりすごすしかないのですか?」

M先生「少ない方だから、そんなに強くは出ないと思うんだけどね。(当然のことながら、薬の容量が少ないほうが副作用も出にくいらしい。)もし、あんまりしんどいようなら言って。症状を和らげることができるから。」

そして「お注射は処置室で看護師が行います。」と言われて、笑いそうになった。女性の先生ならわかるが、M先生が「お注射」と言うのは何となくおかしい。診察室を出て、しばらくすると処置室に呼ばれた。どうやら腕に打つらしい。(色んな人の体験記でお腹に打ったという話も見たけど。)

打った人がうまいのか、針を刺している感覚もほとんどなく、痛みもあまり感じなかった。(私は痛みに弱いが、最近うまい・下手が分かるようになってしまうほど、注射慣れしてしまったらしい。涙)ただし、注射器本体をモロに見てしまい、「げ〜〜〜」と思ったが。(刺している手元は絶対に見ないことにしている。)

…で思わず「痛いと聞いていたわりにはそうでもないですね。」と言うと、「でも、予防接種のように、(注射したところが)熱を持ったり、後から痛みが出てくることがありますから。」と言われ、聞いておいてよかったと思った。(まさにその通りで、2日間ぐらいは触ると痛かったが、普通にしていれば全く気にならず、しこりのような感じもすぐに消えた。)

「お会計が高くてビックリしないでくださいね。」と言われたが、自動清算機で「9830円」と表示され、「ちょっと安いかも?」と逆に驚いた。大学病院だから、他の科の使用分もまとめて大量購入しているのだろうか?と勝手に想像。

そんなわけで今日も猛暑の中、朝からT大病院に出かけて2時間以上も滞在し、何だかえらく疲れた。。(しかし私の体は「それどころじゃない。」と思ったのか?風邪気味だったのに、気が付いたら勝手に治っていた。不思議〜〜。)

でも、気分は不思議なぐらい晴れ晴れとしていた。

想像以上に丁寧な説明をしてもらい、あれだけいやだと思ったホルモン療法も、例え強い副作用がでても納得できると思った。(私が「医者嫌い」になった理由は、「痛かったりしんどかったりする治療を、何の説明も前触れもなくされたから」だと言うことを思い出した。)

そして、「執刀はもちろんのこと、手術までの外来の診察も、全てM先生が面倒見てくれる。」と確信して、自分で思っている以上に安心してしまったらしい。「担当医が、受け持ち患者の面倒見るのは当たり前」と言われそうだが、M先生は数年前から産婦人科の主任教授。そもそも大学病院では、外来と手術でも医師が違うところもあるし、教授に受け持ち患者がいること自体、どっちかというと珍しいと思う。

ただ、M先生の性格から考えると…
「自分には(私を)11年間診て来た責任がある。」 「自分の責任において、手術を決断させた」 「だから自ら執刀するのは当然。」と考えるだろうと思うので、当然といえば当然だが、やはりハッキリ言われるのと、憶測で考えているのとでは全然違うのである。

そして、間違いなく私のカルテは「腹腔鏡下子宮筋腫核出術予定」となっており、M先生はむしろそれしか考えてない気がして、今回も何も聞かなかった。(こんな大切なことをハッキリ聞かず、「あうん」の呼吸と言うのは「まるで長年連れ添った夫婦のよう」…と言えば美しいかもしれないが、仕事だったら、無粋と言われても絶対やらない。時として大事故につながるから。)…というか、今更そんな話をしたら「え?!(子宮も)取りたいの?!」と逆にびっくりされそう。

ともあれ、この日を境に私は、手術に対してほとんど鬱々と考えることがなくなった。「覚悟を決める」とか「腹をくくる」とか、そういうシリアスな気持ちも微塵もない。

残念ながら…、リュープリンの副作用(ほてりと頭痛)は早々に翌日から出てしまったけど。

まるで長くどんよりした天気が続いたあとの快晴の空のよう。こんなにスッキリした気持ちになったのは(手術のことを言われてから)実に半年ぶりぐらいだろうか…?この先また気持ちは変るかもしれないが、自分でもものすごく意外だった。