7.脱力した日〜初のMRI検査(9月12日〜18日)
診察室を出た直後、看護婦さんにM先生の担当日は混むので、予約してもちょっと待ってもらうことになるかもしれないと言われた。
しかし、混む理由は分かる気がする。
私は婦人科医に限らず、例え健診でも医師と会うだけで、すご〜〜く緊張する。初対面なのに、あれだけ緊張せずに、話が出来た医師は初めてだ。
それに、最初に診てもらったS先生より貫禄があるせいか、M先生と話をしてると安心してくる。(もちろん、S先生が良くないわけじゃないし、若さは先生の責任ではないと思う。笑)
…もしかして私って、お気楽な患者?!
M先生のおかげで、初めて私はこの病気のレベルを知った気がした。しかも、この結果を会社の上司に話すと、「子宮筋腫って、怖い病気じゃないんだね。だったら、仕事がヒマなときに手術すれば?」と言われた。
ヒマなときに手術する病気って一体…。(苦笑)
そんなわけで、真正面から向き合って、真剣に取り組む病気ではないと思った。
そんなことしたら、「だるまとにらめっこ」をしているようなもので、単に鬱状態になって、ストレスが溜まるだけなので、バカバカしい。M先生の言うとおり、普通に生活するのが一番だろう。
だから、結局のところ、話は「子供を作るか、作らないか?」という原点に戻った。 そんなわけで私は、「はれほれひれはれ〜〜。」と気の抜けた状態で帰社した。
その日、3時まで会社に戻らなかった私は、夜10時半過ぎまで残業していた。だが、前日までの不安な気持ちはなくなっていたので、さして苦でもない。
その夜、同じく真夜中近くなって帰ってきたみのむちくんに、T大病院の診断結果を伝える。
私「もう何だか、気が抜けちゃったよ〜。」
だが、みのむちくんは不満そうだった。私が「T大病院で、初めて子宮筋腫が大したことない病気だって、思えたよ。」と言うと、こんなことを言った。
みのむちくん「病気としては、大したことないかもしれないけど、女性にとっては深刻な病気だよ。 それにいくら良性でも、身体にそんな大きさのものがあるなんて不自然だよ。
MRIの検査なんて、病院を儲けさせるだけじゃん!半年待ちの手術だったら、予約だけでもしてくればよかったのに。」
私(あれ…?)
私がもっとショックを受けていた時は、「子宮筋腫なんて大したことないよ!盲腸と一緒だよ。」なんて軽く言ってたのに、この変わり様は何だろう?!もしかして、誰かに諭されたのかな?
しかも後日、「1日でも早く手術をした方がいいよ。手術をしてもデメリットなんて、ないじゃん!もしこれが、ガンの手術だったら、再発のことを気にして、手術するのをためらうの?」とも言った。
私(なんて例えを持ってくるんだ!!苦笑)
答えはノーだが、今は全然状況が違う。 M先生の話を聞いて私は、自覚症状はない、今困ってることもない、絶対死なない、再発する可能性は高いとくれば、あんまり速効で手術しても…と思い始めていたのだ。まあ、1年ぐらいの間に何とかしたいとは思っているが…。
それに、いくら手術を前提に行った病院でも、いきなりその話をされるより、話を一旦ニュートラルな状態に戻して考えてくれる医師の方が、好感が持てる。
みのむちくんの変わり様に、「みのこさんがあまりにショックを受けてるから、“これは結構深刻だぞ!”と、思ったんじゃないの?」と言われたこともあった。
確かにそうかもしれない。筋腫が発覚してからここまで、3回ぐらいボロボロ泣いていたし。
それに、私は当事者なんで、リアルタイムな情報を得られるが、みのむちくんはどうしても一歩遅れる。しかも、女性特有の病気なので、男性にはイマイチピンと来ないからだろう。
どっちにせよ、みのむちくんは私の身体のことを心配して言ってるのだろうが、こんなことなら一緒にT大病院に行ってもらえば良かったと思った。
だが、とにかくこの日は、食欲も戻り、今までの睡眠不足が積もり積もって、早々に眠ることにした。久しぶりに安眠できた日である。
18日、 MRI検査を受けに、再びT大病院を訪れる。 私は、MRI検査も生まれて初めてだ。
この検査は、 人によって意見はまちまちで、「中で寝てしまった。」とか、「私は結構好きだ。」という面白い意見もある。その反面、気分が悪くなったという話も聞く。CTスキャンに似た印象があって、「工事現場のようにうるさい」とはよく聞くが、どのぐらいうるさいのだろうか…?
しかも、造影剤を使用したり、しなかったり、撮影時間も人によってまちまちである。
どういう検査なのか何となく想像はつくが、イマイチよく分からない。 そんなわけで、前回ほどではないが、妙に緊張しながら、放射線部に向かった。
子宮筋腫を告知されて以来、初めてのことばかりで、本当にストレスが溜まる。(苦 笑)
ちなみに、MRIは磁場の中で行うので、金属物やクレジットカードなど磁場に影響 されるものは、一切持ち込み不可である。
とまあ、ここまではよくある話だが、アイシャドウがダメなのには驚いた。 (ラメの成分に金属物が入っている場合があるから。)
だが、ラメ入りは最近の流行で、私の持っているのは、アイシャドウどころか、口紅 やマニキュアまで入っている。
しょうがないので、マニキュアも落として、ノーメイクで行った。
予約は午後2時30分。 今日は仕事の途中で抜けて来たので、時間もなく昼食も食べてこなかった。 「もし、造影剤で気分が悪くなったら、イヤだなぁ〜。」と思いつつ、検査室の前で待つこと15分。
中に入ると、検査着のようなものに着替える。金属物以外のものは、問題ないらしいので、靴下は履いたまま、検査台の上に横たわる。そこに、お腹の部分が動かないよう、そば殻枕みたいな重しをお腹にのせて、カバーをかけられる。特に苦しくもない。
そして、CTスキャンみたいな半円形のドームの中に入っていく。
検査技師 「このまま動かないで下さいね。15分で終わりますから。」
私(え?!15分で終わりなの?!)
しばらくすると、規則的なリズム音の中に、カンカンカンカンとか、ピーとか、ガー
とかいう音が断続的に流れる。アフリカの民族音楽と、デジタルノイズ(或いは アナログモデムの音)を足して2で割った感じがした。 心なしかお腹の部分が暖かい。
工事現場のようと聞いていたので、相当うるさいのかと思っていたが、そうでもないと思う。というのも以前、私がいる事務所の下の階で、工事をやっていた ことがあり、電話も話も出来なくて、全く仕事にならないぐらいうるさかった。
そういう音を想像していたからである。
しかも、職業柄デジタルノイズには慣れている。 妙に不規則な、みのむちくんのいびきの方がよっぽどうるさい!(大笑)
ところで、「動くな」と言われると、妙に動きたくなるのが人間の性である。 ほんの少し手を動かすぐらいなら問題ないのかもしれない。撮影箇所は下腹部だし。
だが、そのせいで撮り直しになるのも嫌なので、とにかく動かないようにする。
おかげで呼吸も遠慮がちになり、しかも退屈だ!!(笑) 退屈しのぎに、ドームの内部に新聞か雑誌の切り抜きでも貼っておいてくれたら いいのに。 私は寝付きが悪いので、寝ることもできない。この状態では15分ぐらいが限界だ。
そして、15分後。再びドームの中から戻される。
検査技師「終了です。お疲れ様でした。」
私(え?!これで終わり?!)
結局、造影剤なしの単純MRだった。しかも、検査時間は30分と書かれていたが、
実質は15分で終わった。 というわけで、痛くも痒くも何ともない検査で、妙に緊張していた私は、またまたバ カ を見るハメになる。(苦笑)
ちょっと痛かったのは、財布の中身だけだ。 (参考までに社会保険・本人で4010円)
この日の夜、みのむちくんはMRIに興味深々だったらしく、「どんな検査か教えて よぉ〜!」とうるさい。(笑)
「みのむちくんのいびきの方がよっぽどうるさい よ。」と 私が答えると、「いや〜!!」とわめいていた。
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