目覚めたる眠れる森の美女(3日目・チェスキー・クルムロフ)

チェスキークルムロフの地図チェスキー・クルムロフは、チェコ・南ボヘミア州の小さな都市。13世紀に地元の貴族・南ボヘミアの領主ヴィテーク家のクルムロフが、この地の高台に城を築いたのが始まりらしい。

チェスキーは「チェコの」、クルムロフは「ねじれた川辺の湿地帯」を意味する。地図を見ると、なるほど「Ω」をヨコにしたように土地に街が形成されている。

ボヘミアの深い森に守られたこの街は、あまりの美しさに「眠れる森の美女」と呼ばれ、歴史地区は世界遺産として登録されている。

一時期は衰退したものの、チェコの民主化により、観光都市として再び蘇り、「目覚めたる眠れる森の美女」とも呼ばれているらしい。

私とみのむちくんが降り立ったのは、そのチェスキー・クロムロフのバス停。だが、降車予定だった「スピシャーク(Spicak)」ではなく、隣の終点「アウト・ナード(aut.nadr)」のようだ。しょうがないのでスーツケースと荷物を持ち、ごろごろと国道を歩き出す。

美しきおとぎの国に来たというのに、それはまるで試練のよう。(笑)アスファルトの道はよいが、ヨーロッパ特有の石畳では、時々スーツケースの車輪がひっかかり、スムーズに動かせない。街中に入る頃には疲れてしまい、よく車輪が壊れないものだと感心する。

チェスキークルムロフの街並み スヴォルノスティ広場

私とみのむちくんは、街の中心部に位置する旧市街スヴォルノスティ広場の「グランド(Hotel Grand )」に滞在する。14部屋しかないプチホテルである。この街は、プラハよりこぢんまりしていて、5ッ星ホテルはホテルルージェ(Ruze)ぐらいのもの。逆に、ぼろいホテルもなさそうだ。

ホテルグランド ホテルグランド

チェックインの時、「パスポートを見せて下さい。」と言われ、私のも出そうとしたら必要ないようだ。しかも、宿泊カードの記入も、みのむちくんだけでOKらしい。ちょっと意外だ。(だが、宿泊カードは全てチェコ語のようで、一瞬何が書いてあるのかわからなかった。)

部屋は12号室で、荷物はいつのまにか運んでくれたようだ。ホテルの外観のわりに、館内はかなり改装されている。液晶テレビがあるし、数少ない広場に面した部屋で、大変ラッキーだ。とりあえず荷物を置いて、食事にいくことにする。

ホテルの廊下 ホテルの共有スペース
客室 窓からスヴォルノスティ広場が見える

しかし、ガイドブックによるチェスキー・クルムロフの解説はかなり少ない。食べるところは「エッゲンベルグ(Eggenberg)」というビアレストランしか載っておらず、とりあえずそこに向かう。そんなに寒くないし、遠くないので、ジャケットも要らないだろう。

プラハが「中世ヨーロッパそのまま」なのに対し、チェスキー・クロムロフは「おとぎの国」そのもの。馬車どころか、街角から魔法使いや妖精が現れてもおかしくない雰囲気。おまけに平和そのもので、犯罪の欠片すら感じられないが、地方都市のせいか夜は早い。

まばらに開いている土産物屋を見ていくと、プラハよりずっと安く売られている。それにしても、広場に屋台が出ていたのはなぜだろう?明日はチェコの日だからか?…というか「9月25日〜28日まで」は、何か特別なことがあるのだろうか?(結局、ローマ法王が来訪したということらしい。)

モルダウ川沿い クルムロフ城へ続く道
チェスキークルムロフの街並み モルダウ川沿い

「エッゲンベルグ」は大きな建物のレストラン。昔の醸造所の冷蔵保管庫だった建物を、ビアレストランに改造したらしい。だが、営業しているのか?してないのか?よくわからない。恐る恐る入ってみると、すぐに店内ではなく、薄暗い通路が続いている。途中、窓辺に座り込んでいる東洋人に何かを言われたが、無視して通り過ぎる。(何でこんなところにいるのか?)

店内に入ると、どうやら営業しており、なんと日本語メニューまである。ビールを注文したら、「大きいの?小さいの?(大ジョッキーか小ジョッキーか?という意味)」と日本語で質問するあたり、かなり日本人が来ているのだろうか?(ガイドブックには「観光客や市民が集まる人気店」とあったが、この店しか載ってないからだろう。)

エッゲンベルグの店内 エッゲンベルグの店内

だが、その日本語はまるっきり直訳で、「農夫のお皿」とか「森林監督官の皿」としか書かれておらず、詳細は英語メニューを見ないと分からない。(苦笑)とりあえずハムとチーズのサラダ、内容がよくわからない「農夫のお皿」、ずっと食べてみたかった骨付きのローストポークを注文する。

「農夫のお皿」の正体は、ソーセージとハム、ベーコン、焼き豚、ピクルスなどの盛り合わせ。ベーコンとソーセージが特においしい。サラダは、具を全てさいの目状にカットしてある。プラハでもそうだったので、これがチェコ風なのだろうか?

農夫のお皿 チェコ風サラダ

さらにローストポークは、またまた「はじめ人間ギャートルズ」のマンガ肉のよう。すごいボリュームで、添え物にパンがついてるが、とてもとても全部食べられそうにない。
チェコのマンガ肉
だが、アメリカとの大きな違いは、「チェコのギャートルズ」は単に焼いただけのシンプルな味付け。それだけでも結構おいしい。欲を言えば、もうちょっと味が濃くてもいいのでは?

「しょうゆをかけるとおいしいかも…?」と思ったが、私は「号にいれば号に従え主義」。例えここに醤油があってもかけないだろう。

それにしても…なんだかあわただしい店だなあ〜。

ふと奥に目をやると、3つのテーブルに東洋人のグループがいて、ウエイターが忙しいのはそのせいだろう。どうも中国人のツアコン付きツアーらしく、添乗員らしき男性は、5分と着席していない。一人で飲み物の注文を取ったり、客の記念撮影を手伝ったりと、めまぐるしくよく働く。

みのむちくんは「あんなによく働く中国人を初めて見た。」と驚いている。(以前、仕事で3週間ほど北京に滞在していたからだ。)だがさっき、店の入り口近くで座り込んで、「ガラ悪い東洋人がいるなぁ〜。」と思ったのもこの添乗員。どうやら私とみのむちくんを、自分の客と間違えたようである。(呆)

エッゲンベルグの店内 さらによく見ると、その添乗員と同じテーブルに、欧州系のおっさんがいる。このツアーのドライバーかガイドだろうか?「自分とは無関係」とばかりに、1人黙々と食べている。このあまりにマイペースな様子に、最初は同じグループと思わなかった。

だがこの中国人グループの様子は、かつての日本のツアー客を見ているよう。この店での夕食は190コルナ(約1007円)のコースらしい。メインは2種類から選択できるのだが、人のものも食べたくなるのだろう。

追加の料理も置かれており、さらに添乗員がスーツケースから、中国の調味料らしきものを出して配っているのを見た時には「わがままな客だなぁ。」と呆れた。

しかも、この店と懇意にしているらしくやりたい放題。(呆)グループの中に誕生日の客がいるらしく、どこかで買ってきたらしい誕生日ケーキを取り出す。あのコースは、デザートにケーキがついているのに、またケーキか?

おまけに店内全部、私とみのむちくんのところまで真っ暗にして、騒ぎ出した日には「いいかげんにしろよなっっ!!(激怒)」とだんだん腹が立ってきた。

2夜連続で怒る私。もしこのグループと同じホテルだったら、私のチェスキー・クルムロフに対する印象は、いまいちのものになっただろう。プチホテルを選んで正解である。興ざめてきたし、お腹いっぱいになったので、この辺で帰ることにする。2人で430コルナ(約2280円)なのは幸いか?

チェスキークルムロフの夜 川沿いの店

やはり夜も更けると、セーター1枚では寒い。ダウンジャケットを持ってくるべきだったか?これで風邪を引かなければいいが…。しかもこの街は、美しくともあまり実用的ではない。ミネラルウォーターを買って帰りたいのに、開いているのはレストランと一部の土産物屋のみ。どこの都市にもある雑貨屋(キオスクのような店)は開いていない。

ほとんど皆、日帰りで観光するからだろうか?しょうがないので、客室のミニバーにあるミネラルウォーターを飲むことにする。少々高いが、それでもプラハの中心部・キオスク価格である。

道沿いのカフェ 土産物屋のショーウィンドウ
土産物屋のショーウィンドウ スヴォルノスティ広場

時刻は午後9時。久々に早く帰ってきて、明日もゆっくりなので、ジーパンを洗濯する。お湯がしっかり出るので汚れが落ちやすい。

さらに、インターネットのコネクターがあったので、ケーブルをつなげ、あまり期待せずにIEを立ちげた。すると「Yahoo!ジャパン」が表示されるではないか。ヨーロッパにおいて有線で、しかも無料でネットができるなんてかなり珍しい。

だがそれは虫の知らせか…?
部屋にあるデスク すぐさまメールのチェックを始めると…ウィーンへのシャトルバスを依頼した「PENSION LOBO」からメールが届いていた。

We haven't received the final reconfirmation of your reservation for the shuttle from Cesky Krumlov to Vienna (2 seats on 29th September 2009) yet.
私たちはまだ、あなたの最終的な予約確認(2009年9月29日2座席分)を受け取ってませんでした。

Please, reconfirm your reservation as soon as possible or we will have to cancel it.
乗車するなら、どうかすぐに予約確認をしてください。もしくは私たちは予約を取り消さないといけません。

はああああああ〜〜〜〜?!何を言う〜〜〜?!!

この担当者は何か勘違いをしているようだ。私はとっくの昔に送信済み。しかもその時、滞在ホテルを変更したことも知らせていて、その返事(集合時間を変更すること)も受け取ってるのである。

ともあれ急いで、下記の英文を作成し、以前受け取ったメールの文章もつけた。だが海外旅行中で、心にゆとりがあるからだろうか?いつも、企業のミスに対して容赦ない私にしては、かなり寛大な文章である。

I sent the following mail on September 22nd and received an answer from you .
私は9月22日にメールを送信し、あなたから下記の返信をいただきました。

We're staying at Hotel-Grand now.There is no change in a schedule.Please pick us up at 8:45 am in front of Hotel Grand at September 29th.
今、ホテルグランドに滞在しています。予定は変更してませんので、ピックアップしてください。


スヴォルノスティ広場の像 なぜなら今回の旅行において、チェスキー・クルムロフからウィーンへの移動が一番重要なのだ。
もしもこのホテルが、ネットが出来る環境になく、このメールを見ることができなかったら?
もし私がこのメールに気が付かなかったら?
29日当日、私とみのむちくんはいつまで経っても来ないバスを待っていただろう。

考えるだけで怖い。「間一髪!!」って感じである。
もちろんこれに懲りて、個人旅行をやめるということはありえないが…。

そして、久々にネットにつながったことをいいことに、SNSの日記を更新する。だが、またふと不安になり、ホテルに連絡が来た時のことを考え、さらに下記のようなメールを送信する。

I'm staying at room 12 of Hotel Grand now.(It's registered by my husband ”minomuchi”.)
私は今、ホテルグランドの12号室にいます。宿泊者は私ではなく、夫・みのむちくんの名前で登録されています。

If you make a contact to me, to this e-mail address or Hotel Grand, please.
もし連絡をくださるなら、このアドレスかホテルに連絡ください。


これでまあ大丈夫だろう。

気が付くと、夜11時近くなってきたので、風呂に入ることにする。チェコはヨーロッパでも寒い国だからか?そもそも館内全体でも、暖房が効いている上に、グランドホテルボヘミアと同じく浴室が床暖房になっている。熱いお湯もちゃんと出るし。(南欧であるマルタは「水風呂?」と思ったぐらいお湯がでなかった。)

客室のバスタブ 客室のトイレ

風呂から上がると、時刻は11時30分過ぎ。
もう寝たいが、昨日1日分の旅行記がまだ全く手をつけられていない。細かいことを色々書きたくなるのは、何回も旅行記を作っているうちに、欲がでてきたということか?今日のみのむちくんは、そんなに飲んでないはずなのに大いびきである。(笑)




「おとぎの国」にはクマがいる。(4日目・チェスキークルムロフ・最終日)

チェスキー・クルムロフ2日目にして最終日の今日は、朝8時前に目覚めた。
今日はそんなにやることもないので、ゆっくりでも大丈夫だろう。

まずホテルのレストランで朝食。14室しかないこのホテルのレストランは、大変こぢんまりしている。そして、バフェスタイルであるものの、大変ささやかである。

ホテルのレストラン ホテルのレストラン

だがその数少ないメニューは「焼きたてのデニッシュやクロワッサン」「いい具合に半熟の目玉焼き」「ほどよく焼けたカリカリベーコン」。スクランブルエッグの火の通り具合も絶妙で、これ以上ないぐらい完璧に作ってある。

私は今まで、色んな国の様々なランクのホテルに滞在しているが、この朝食は本当においしい。あまり期待してなかったせいもあるが、アップルワールドの私の口コミは「感動!」になってしまった。(画像ではあまり表現できてないのが残念。)

モルダウ川沿い 城近くのカフェ

今日はまず、この街のシンボルと言われているチェスキー・クルムロフ城に向かう。チェコではプラハ城についで2番目の大きさ。建築当初はゴシック様式として作られたが、16世紀にルネッサンス様式に改築され、現在の姿が出来たと言われている。

チェコの数少ない祝日「チェコの日」なので休みだと思うが、敷地内に入ることはできる。「赤の門」をくぐり、なぜか城の外堀にはクマがいる。なぜクマがいるのか?と言うと、こんな逸話があるそうだ。

赤の門 城内へ

「昔、城主が森へ鹿狩りに出かけたときのこと…狩りをしていると突然、メスのクマに襲われた。慌てた城主は、一目散に城まで逃げ帰った。その時、追っかけて来たクマを振り切ろうと、跳ね橋を上げたところ、クマは橋を渡りきれず、堀に落ちてしまった。そして、そこで子供を産み育た。」

…と言うことで、以来300年以上、城の堀に住み続けているらしい。わざわざ書くほど大したエピソードではないが、本当だろうか?

堀で飼われているクマ 堀で飼われているクマ
城内へ フラデークの塔が見える

さらに「フラデークの塔」と呼ばれる建物があり、眺めがよさそうだ。入場できそうだが、料金はかかるのだろうか?…とよく見ると、入り口のところでチケットが売られている。料金は1人50コルナ(約265円)。私とみのむちくんで100コルナだが、100USドル(約9000円)と言われる。そんな関西人みたいなギャグを。(笑)

だがこの塔も、ヨーロッパの例に漏れず、エレベータなど存在しない。長く続く螺旋階段を、最上階まで自力で登らなければいけない。おまけに2人通るのが精一杯の狭さで、心理的にも息苦しくて大変だ。

フラデークの塔 階段 フラデークの塔の内部
フラデークの塔内部 フラデークの塔の中から

だが、塔の上から街全体を見渡せる景色は絶景。「ドラクエの世界観を現実化したら、こんな感じなんだろうなぁ。」とふと思った。しかし、この急な階段は、のぼりが大変なら下りも大変だ。ブーツのかかとを石ですってしまい、旅行のために新調しなくてよかったと思う。

フラデークの塔内部 フラデークの塔から
フラデークの塔から フラデークの塔から
フラデークの塔から フラデークの塔から
フラデークの塔から フラデークの塔から

塔を出てさらに進むと、敷地内は意外に広い。地元の人々の憩いの場にもなっているのか?犬を連れて歩いている人も多く見かける。城の壁面はよくよく見ると、だまし絵になってるのだが、またまた帰国後に調べると、この城だけでなく、街のあちこちにだまし絵があるらしい。

城内(実はだまし絵) 城内の土産物屋

城の土産物屋など、あっちこっちウロウロして、インフォメーションを発見する。今日は祝日だが、ガイド付きツアーにて城内見学ができるようだ。100コルナ(530円)と130コルナ(689円)のルートがあり、ガイドブックには「予約制」とあったが、いつでも大丈夫なよう。

少々迷ったが、午後はお土産買いに専念したので、やめることにする。チェスキー・クルムロフの夜は、恐ろしく早いのである。

プラスティー橋より 庭園に続く道

朝も11時をすぎると、だんだん人が増えてくる。ツアー客が到着する時間だろうか?
「何だかえらく小さいな人たちがいるなあ。」と思ったら、今度は日本人のグループ。(笑)ガイドは現地の人らしいが、どうやら日本語で説明している様子。私も平均身長より高いが、チェコ人はさらに高いからそう感じるのか?(チェコもノルウェーのように、ホテルの便座やバスの座席は高い。)

典型的撮影スポット プラスティー橋より
プラスティー橋より 庭園へ続く道

そして、庭園の方に歩いていくと、ネットなどでよく見かける撮影スポットを発見。私は先ほどのフラデークの塔からの方が絶景だと思うが、この覗いてる感じがかわいらしくてよいのだろうか?(だがフラデークの塔とこの場所、城と庭園をつなぐプラスティー橋が、街を眺める2大スポットらしい。)

庭園 庭園
庭園 庭園

城内まるで迷路のようなこの庭園は、古い映画の例えで言うとデヴィット・ボウイ主演の「ラビリンス」、比較的新しいところでは「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」を思い出した。

気がつくと、何だかんだで2時間以上が経過している。これがツアーなら、チェスキー・クルムロフの街の滞在時間全部で2〜3時間ってところだろう。